アクティブリスニング・傾聴周辺のゲーム研修の開発背景(1) |ビジネスゲーム研修で企業内人材育成を内製化

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アクティブリスニング・傾聴周辺のゲーム研修の開発背景(1)

「聴衆力」商品画像

傾聴に関して、「聴衆力」「リア王」「5W」「傾聴職人」という研修ツールを併せてリリースした。「傾聴職人」以外はいずれも「傾聴」を分解した中の一つを学ぶ。傾聴は、全てのビジネスパーソンに必要なスキルと言われ、各社で教育がなされており、テーマとしては使い古されたものともいえる。最近では、工場における「安全」と「離職防止」を目的としてのノンテクニカルスキル教育も重要視され、ノンテクスキルの向上が目指されている。そうしたものにどうして私たちが目を向け、開発することにしたのかを書き記していきたい。

なぜ今開発したのか

基本的に、当社の開発は顧客の声を起点としている。傾聴は、頻出の話題であり、実は2018年にも開発に着手し、原型となる考え方を完成させていた。その後、各所での実践やウェビナー実施等を経て、概念的に洗練させてきた。一方、前述のとおり、ある種コモディティともいえる「傾聴」を改めて扱うことは、車輪の再発明でもあり、当社がなぜそのタイミングで開発するかといった必然性に欠けていたため、先送りになってきていた。当社では、「売れるから」というビジネス上の理由でなく、「世の中にないから」、また「今、必要とされているから」というところを大事にしている。これらが満たされるタイミングが訪れたと感じたことが開発を開始した背景である。

数年にわたるコロナ禍において、企業でのコミュニケーションの質的な毀損が顕著になった。(Zoomの創業者がZoomを使わずオフィスに戻れと話していたという記事が話題になったが、)オンラインコミュニケーションで、縦のライン以外の関係性が希薄になった。学校も同様で、大学生や高校生でも似たことが起こっている。当社には高校時代からコロナ禍で、Zoomを使っていたというインターン生が入ってきている。さすがに現在はオフラインに戻ったようだが、彼らにとっては、授業とはオンラインのものであり、オンラインでは身体活動を伴った反応をしないのが「フツウ」である。一人ぼっちでオンライン授業に参加している中で、物理的な手を実際に挙げたり、チャットで積極的に相槌を打つといったことは行われない。無反応が常態なのである。また、オンライン会議の所作として、「重ねない」ようにマイクオフにする、マイクオンにすることで話したい意思を伝えるといったことは、新マナーとして一般化した。

経験の長いビジネスパーソンにとっては、オンラインの状況は「非日常」かもしれない。しかし、入社前からオンラインが常態化している若手には、オンラインこそ「日常」であり、オフラインの所作は「非日常の必要ない」ものであったが故に、学習されていないことがありうる。現実に、アルバイト経験等の社会的経験の不足が顕著になっているという声も多い。また、工場などでは黙食や飲み会禁止が常態化し、話をしない非人間的な環境もあるという。

先日、「カレイドさんはオンラインの会社かと思っていました」と言われ、かなり驚かされたが、いつの時点で関わり始めたかというのは、意識しておくべき重要事項なのである。

オンライン越しのコミュニケーションが常態の若手にとって、リアルな職場は異界である。その際の所作 を「当然、学生時代に学んだはず」「新卒研修で教わったでしょう」といってもそれは理不尽だ。必要のないことは学ばれない。そして、画面越しの世界の作法を現実に適応する若手がいたとしても不思議はない。学習していないことは実践できないし、学んでいないことを新たに学ぶ際には、既に学んだことの延長線上で考えるのが常だからだ。

昨今、人材開発部門や事業部門の育成を担当する方々と会話をする際に、こうした点の学び直しが急務であるという話題が出る。マナー研修レベルで学び直しが求められているというのだ。基礎教育に改めて投資するのは旧来であれば無駄であり、考えられないことであったが、コロナ禍の長期化によって、職場の1-2年上の先輩もコロナ世代、その上の先輩もあまりコロナ前の業務を経験していないといったことが20代を中心に起きているため、基礎の学び直しが注目されているのだ。

一方で、研修事業者はニーズが顕在化してから長時間を投入しての開発に着手することが多く、急速な変化や、一時的なニーズには、タイムリーに対応しにくい。このため、適切な研修がないという声がある。また、企業としても「当然知っているべき」と感じられる内容に対して、長時間かつ高い金額をかけるのはなかなか受け容れにくい。となると当社の出番なのである。当社は以前から、そうした隙間のニーズに応えるのを得意としている。だから社会貢献につながるのではないか、そういった発想で今回の開発を開始したのだ。

他にもある。当社では、ハラスメント研修を実施することが多い(ゲームは使わずに、ケーススタディを用いて、事例検討するようなものも多い)。その中で、「尊重や共感、敬意、受容」といったキーワードが重要になることが多い。これは、ハラスメントの裏には、D&I(DEI/DEIB)といったものへの理解不足がある。特に、インクルージョン(包摂)には、相手を尊重し聞き合える心理的に安全な職場がある。ここでも傾聴が再び注目されているのだ。

傾聴の型を段階的に学習する

次に、「傾聴」に関する言葉を分析したい。私は言葉の整理をしてから何かにとりかかる。言葉の話は長くなるので、ウェビナーに譲るが、予めお伝えしたいことが一点だけある。「傾聴」は範囲が広い言葉で、敬意や共感、尊重や受容までを示すとなると、講義だけで身に付くものではないということだ。コミュニケーション研修や傾聴のように範囲が広いものを扱う場合は、分解し、段階的に学習するに限る。研修では「ポイント」を示すことがあるが、ポイントとは「点」のことであり、「要素」だ。だから、要素分解を適切に行っておかないと厳密な意味で「点」を示すことができない。

また、傾聴は心の姿勢とする考え方もあり、スキルではなく態度を重視することもあるが、「共感」に関するコラムで書いたように、私は「心の姿勢を取れ」といわれてもその姿勢を取ることはできない。やり方が分からないものは根性論である。なぜ根性論になっていまうかというと、共感しているかどうかは外部からは観察しえないからだ。自分の心を他者が識ることはできないし、他者の心を識ることはできない。だから、スキルは教えられるが、態度は教えにくく、態度はスキルの後についてくるものだと考える。

当社では、スキルとして傾聴を教えるために、「型」を学ぶのが近道と考えている。邪道と思われるかもしれないが、本当にわかっているかどうかは不問とし、わかってもらえていると相手が感じられる型に沿った対応ができるかどうかを重視した。型ができるようになれば、観察できない共感の気持ちも表現できるようになるという考え方だ。

型は、類型やパターンと呼ばれるが、そのパターンに沿えば、大きくは外れない。そうしたものが型である。守破離(しゅはり)という言葉があるが、型はまさに守にあたる。守は、堅苦しいものだ。ただ、それに倣って訓練しているうちに、徐々にその型を行っていることが意識されなくなり、最後は忘れられる。私は、中島敦の「名人伝 」を人材開発を行う方にとっての必読書と考えている。名人伝は、弓の名手を目指す若者の熟達の話で、人の熟達のプロセスを書いた短編だ。中盤には、不射の射といって、射ずに射る境地に入り、最後には射ることすら忘れる。そうした熟達に関する深い洞察を与えてくれる。

さて、「聴衆力」と「リア王」は、「聴いているふり」といったら大げさかもしれないが、聴いていると相手が感じてくれる「姿勢」や「反応」のパターンをゲームで学ぶものだ。「姿勢」に対応するものが「聴衆力」であり、「反応」のうち、口頭での反応に絞ったものが「リア王」である。リア王がカバーできない、相槌等については、過去作である「雑技談」がカバーしている。また、並行して、傾聴姿勢とリアクションに続く「問い」をテーマにし、なんでもない会話が終わった後に幸せだったと感じられることを目指した「5W(ゴダブリュウ)」と、これら3つをまとめて学べる「傾聴職人」のリリースも行った。

それらについては「アクティブリスニング・傾聴周辺のゲーム研修の開発背景(2)」で説明しよう。

傾聴姿勢を学ぶ「聴衆力」

反応(リアクション)を学習する「リア王」

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