
以前のコラム「ノンテクニカルスキルを考える上での前提知識」の続きです。
ある日、日ごろからお付き合いのある化学メーカーのお客さまから「ノンテク2.0」についてご教示いただきました。ノンテクニカルスキルという表現は製造業、特に化学系のメーカーで非常に普及しているもので、原典としては、南川忠男さんの著書「産業現場のノンテクニカルスキルを学ぶ 事故防止の取り組み 」が挙げられます。
ノンテクニカルスキルとは?
まず、そもそもノンテクニカルスキルがどのようなものかについては、別なコラム「現場で使われる「ノンテクニカルスキル」とはどんなスキルか?」に書きましたが、簡単に説明すると、「ノン」テクニカルスキルなので、テクニカルスキル以外の全てのスキルがノンテクニカルスキルです。
「スキル」であるということは、先天的なものではなく、「学習可能」という要件がありますから、ノンテクニカルスキルは一般的には、ソーシャルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルなど、さまざまな要素を含む語彙だといえるでしょう。
ノンテクニカルスキルは、状況認識力、コミュニケーション力、意思決定力のように最後に「力」がつきます。「力」がつくのは、スキルだからです。
ノンテクニカルスキルの7つのスキルは、以下のように表されます。
- 状況認識力
- コミュニケーション力
- 意思決定力
- チームワーク力
- リーダーシップ力
- ストレスマネジメント力
- 疲労への対処力
なお、前提として、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルは車の両輪のように支え合う関係にありますが、実はスキルの手前に「あるもの」が存在することが分かりました。これが「ノンテクニカルスキル2.0」の前提となっています。ノンテクニカルスキル2.0(ノンテク2.0)とは、ノンテクニカルスキルを含むスキル以外も含めて捉え直す体系なのです。
ノンテクニカルスキル2.0とは?
ノンテクニカルスキルは重要でありながら、「あるもの」と比べて劣後することが分かりました。「あるもの」のことを「成功への要素」と説明しています。この成功の要素は大きく2つあり、1つは「ワークエンゲージメント」、もう1つは「スモーラーリーダーシップ」です。
「ワークエンゲージメント」については説明の必要がないでしょう。「スモーラーリーダーシップ」については学術的な文献が存在しませんので、おそらく造語だと考えられます。なお、「リーダーシップ」に関する大きな誤解は、「リーダー」という職位を持つ人が発揮するものをリーダーシップと考えることです。
リーダーシップ論は数々の変遷をたどってきていますが、まず、リーダーシップは一般社員であろうが新入社員であろうが誰にでも発揮可能なものであり、職場に一点集中するもものではなく、職場に遍在するものです。また、「ぐいぐい引っ張る」ことがリーダーシップでもなく、ちょっとしたことであっても、「周りが動きやすいように支援する」といったことも含めてリーダーシップと言われるようになってきており、こうしたリーダーシップをサーバントリーダーシップと呼びます。
ただ、現場での利用を考えると、単に「リーダーシップ」というだけでは語彙がすり合わせられていないために誤解されることが多かったのでしょう。ノンテク2.0では「スモーラーリーダーシップ」という名前がつきました。
ここで注意してほしいのは、「ワークエンゲージメント」と「スモーラーリーダーシップ」は最後に「力」がつきません。つまり「スキル」ではないということです。ですから、ノンテクニカルスキルに2要素が加わったのではなく、ノンテクニカルスキルを支える二つの「成功への要素」なのです。
ノンテクニカルスキル教育にしても何にしても、従業員がやる気がないような状態ではうまくいきませんし、人間関係が崩壊していたらうまくいきません。そのため、これら二つの成功への要素が前提となったのです。
二つの成功要素にどうアプローチするか
では、これらの2要素をどのように開発していけばよいのでしょうか。なにせ「スキル」ではありませんから、スキルが向上したのかといった効果測定すらできないわけです。そこに関しては、私たちが教育工学的なところでお手伝いをしてきた「重要性認知」や「ジョブ・クラフティング」などの知見が少なからず役に立ちます。
ノンテクニカルスキル2.0はまだまだ普及したキーワードではないかもしれませんので、もし、この話題に興味をお持ちの方がいらっしゃれば、お打合せの際にでも是非声をかけてみてください。
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公開日: 2025年11月10日
