以前「現場で使われる「ノンテクニカルスキル」とはどんなスキルか?」というコラムを書きました。「ノンテクニカルスキル(ノンテク)」という言葉を聴いたことがない人事・人材開発の方が、例えば、カッツ曲線におけるヒューマンスキル等の類似の概念から紐づけて理解できるように、平易に書きました。
今回は、応用編として、ノンテクニカルスキルを詳しく説明します。最近「ノンテク2.0」が話題になっていることもあるので、そこまで含めたいのですが、まずはノンテクニカルスキルについて書きます。
ノンテクニカルスキルとは?
ノンテクニカルスキルとは、「ノン」テクニカルスキルですから、テクニカルスキル以外のもの全てを指します。テクニカルスキルは技術に関するものですので、「非技術」のスキルです。
元々海外発で、航空会社由来のものと考えられますが、私がお話をよく伺うのは、ガラスメーカーご出身の南川氏の著書「産業現場のノンテクニカルスキルを学ぶ」で、今回はその一連の著作及び私が伺ったことをベースに書きます。
ノンテクニカルスキルの主要5カテゴリーは以下の5項目です。
- 状況認識
- コミュニケーション
- 意思決定
- チームワーク
- リーダーシップ
更に、それに2カテゴリー(ストレスマネジメントと疲労への対処)が追加され、ノンテクニカルスキルの7カテゴリーとなりました。(ノンテクニカルスキルの7つのスキルとも表記されるため、カテゴリとスキルは同種のものとして扱われていると考えられます)。
7つのカテゴリーには、前述の主要5カテゴリーに、ストレスマネジメントと疲労への対処が加わり、7項目となりました。
また、忘れてはならないこととして、ノンテクニカルスキルは「スキル」ということを挙げておきます。なので、最後に「力」という語を付して、7つのスキルといった場合は、以下のように表されます。
- 状況認識力
- コミュニケーション力
- 意思決定力
- チームワーク力
- リーダーシップ力
- ストレスマネジメント力
- 疲労への対処力
この中で、状況認識→コミュニケーション→意思決定と、3段階として語られていることは見逃せません。
状況認識は個人の思考活動であり、コミュニケーションは個人の働きかけのスキルであり、特に情報の共有が意図される。それを経て相互の認識が共有され、個人の意思決定と合意形成を経て集団としての意思決定に至る。そういうモデルだと考えるとよいと思います。
ノンテクニカルスキルを説明する上での前提知識
前提として、意外と見落とされがちな4点を挙げます。
- ノンテクニカルスキルは、現場寄りのスキル
- ノンテクニカルスキルは、事後対処ではなく予防保全のためのもの
- ノンテクニカルスキルは、全従業員に必要なスキル
- ノンテクニカルスキルは、「習得できる」「具体的で観察できる」「再現できる」
ノンテクニカルスキルは、現場寄りのスキルですので、本社など現場を伴わない場合には使いません。また、スキルの中でも事後対処ではなく予防保全を目的としたスキルセットです。その点で、クライシスマネジメントのような事故が起きてからの対処とは一線を画します。また、予防保全と関係のないスキルはそもそも範疇外となります。
また、全従業員に遍く必要なスキルであることは見逃せません。リーダー向けとか現場向けといった特定の階層や職種に限定して求められるスキルではありません。テクニカルスキルとの相互作用によって、安全の実現を目指したものなのです。
最後に、繰り返しとなりますが、ノンテクニカルスキルの最後に「スキル」とあります。スキルはよく使われる言葉の割に、理解度が低いので改めて書いておくと、「スキル」とは能力の一つですから、「習得できる」「具体的で観察できる」「再現できる」ことが要件です。これができないものはスキルではありません。例えば、心理的安全性のようなものは「力」を付けられませんから、ノンテクニカルスキルには含まないということです。
ノンテク2.0にむけて
前項の最後に書いた「力」とつかないものにも大切なものがあります。そうした「力」ではないものをどう取り扱うか。これがノンテク2.0につながってきます。これについても追ってコラムを書きたいと思いますので、お楽しみに。
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カテゴリー: 代表コラム
公開日: 2025年8月18日