言語依存と文化依存(研修の翻訳についての話) | ビジネスゲーム研修で人材育成の内製化を支援|カレイドソリューションズ

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言語依存と文化依存(研修の翻訳についての話)

当社のコンテンツは、もともと世界展開を想定して作っているわけではありません。ただ、企業はグローバル化していますので、何度か海外向けに研修を翻訳して提供したことがあります。

例えば、トナリノココロ®の中国語版、エコーズの中国語版など、比較的中国語への翻訳が多いように感じます。

コロナ禍直前には、イエナイヨの英語化の話など、さまざまなお誘いがあり、2010年代にはGo!シンガポールプロジェクトと称し、アジア展開を考えていた時期もありました。また、EQ関連でスイスの会社との提携を模索していた時期もありました。しかし、その後のコロナ禍で国際的な展開は全てストップしていました。ポストコロナでも、オンライン打ち合わせが発達したため、あまり海外案件はなかったのですが、ようやく、久々の外国語版のご相談がありました。(元々海外志向が強いのでこうした相談はわくわくします。)

その中で、候補となったコンテンツが二つあったのですが、その選定を行う過程で「言語依存」と「文化依存」が話題になりました。

これまで言語依存と文化依存については書いたことがありませんでしたので、今回は言語依存と文化依存について書きたいと思います。

言語依存とは

まず、「言語依存」とは、言語に依存することで、他言語を母語とする方が読解できないことを指します。例えば、このコラムも日本語に言語依存しています。海外の方で日本語に堪能でない方が本コラムを読もうと思ったら、翻訳をしなければ読めません。ボードゲームなどで翻訳をする際にも論点になるのですが、ボードゲームを購入する際の検討事項に「言語依存」の度合いが表示されていることがあります。

逐語訳と意訳

ただ、翻訳にも種類があります。逐語訳と意訳について聞いたことがあるでしょう。

逐語訳は形式を重視するため不自然になりがちです。一方、意訳は意図を汲み取り再構成しますので読みやすくなります。

100%言語依存の文章は、逐語訳でも自然に読み解けます。

文化依存とは

ただ、逐語訳をしても意味が分からない場合、「文化依存」があるかもしれません。

文化依存がある場合、そのまま訳しても不自然であったり、言葉は分かるが意味が分からないといったことが問題になります。例えば、文化的背景をしらなければ読めないもののことです。逐語訳だと分からないので、分かるように書き換える(意訳)をしたりします。

更にいうと「翻訳不能」というものもあります。ダジャレや押韻したもの、「もったいない」など、対応する語彙が存在しないものなどは翻訳できませんので、訳注を入れたりすることがあります。

文章だけでもこうした問題が起こるのですが、もちろん、研修では、テキスト以外の情報もたくさん用います。特にゲームは、文章に加えて、イラスト、ルール、仕組みが合わさって作成されており、最近は動画や音声などを用いることもあります。

翻訳はAIでなんとかなるのか

この翻訳にあたっては、昨今生成AIの発達により、かなり楽になりました。ただし、「逐語訳でいける」という限定付きです。逐語訳でなんとかなる言語依存にみのものであればどんな方にでも(AIでも)できるので安価に進められます。一方、意訳となってくるとそうはいきません。翻訳する側が相手国の言語に精通している必要があるのです。

例えば、当社のコンテンツでは、源氏の子孫を誇りとするキャラクターが「それがし」などの古めかしい言葉を使いながら、ハラキリを要求してくるというカスハラの場面があります。ほかにもオタク、ゴスロリなどいろいろな文化依存キャラクターが登場します。

これをどう翻訳するかというと、そもそも外国のそれに類似した立場の人を探し、古語を調べ、イラストを検討し、、、となかなか難しい作業をすることになります。ここまでくると文化依存が大きくてもはや翻訳の範疇を超えてしまうのです。

ということで、そのご説明をして文化依存の高さをご理解いただき、片方のコンテンツを除外いただきました。

個人的に感じた課題としては、昨今、あまり文化依存を考慮して開発を行っていなかったこと、カスハラが日本独自のものというところもあってのことですが、個人的には考えさせられる話題でした。これと関連して、語彙レベルの話もこのところ頻繁に議論になるため、極力平易な語彙を引き続き心掛けていく必要がありそうです。自分の使う言葉をみんなが知っていると思ってはいけないのです。

余談ですが、今回翻訳する話題が出たのは、とあるコンテンツの「中国語(簡体字)」「台湾語(繁体字)」「韓国語(ハングル)」「ベトナム語(アルファベット)」です。

私は、中国語と韓国語は学習歴があるのでざっくり分かるのですが、ベトナム語は学習歴がなく、どのような文字で綴るのかもわかっていませんでした。なので、少し触りを勉強したところ、アルファベット表記(pho:フォー)であることと、7割くらいは漢語由来の越語と呼ばれるもの(例えば、「注意」を「chú ý(チューイー)」と読むとか、「天然」を「thiên nhiên(ティエンニエン)」と読むとかですね。)らしく、比較的学びやすい言葉ということも分かりました。

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