ジョブ・クラフティングを紐解く(1) | ビジネスゲーム研修で人材育成を内製化 | カレイドソリューションズ

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ジョブ・クラフティングを紐解く(1)

なぜ今ジョブ・クラフティングに言及するか

2010年代後半くらいからジョブ・クラフティングという言葉を聞くようになりました。当時、ポジティブ心理学界隈の友人からこの言葉を聞いて、研修で扱うものではないという印象を持ったのもあって、掘り下げなかったのですが、ここにきて必要性を感じるようになってきました。仕事のマンネリにジョブ・クラフティングは対応できる可能性があるからです。

マンネリの話は昔からあるものだったのですが、このところ、ルートセールスや製造現場といったところからマンネリに対する手当をしなければならないという相談がくるようになったという話を書きました(なぜマンネリに関する研修相談が増えているのか)。これが今回ジョブ・クラフティングについて書こうと思った理由です。

ジョブ・クラフティングのクラフティングとは

ここまでジョブ・クラフティングという言葉を未定義に使ってきました。専門用語ですが、言葉に定義はいろいろとあって良いのですが、私はいつものように原義でものを考えます。

まず、「クラフティング」は、「クラフト」から来ています。「ペーパークラフト」という言葉もある通り、「手作り」という意味合いを持つ英語です。次に、この手の新しい概念は、主語が大事なので、誰がクラフティングするかを確認しておきましょう。会社ではなく自分が自分のジョブをクラフティングするという考え方です。この考え方は、会社が仕事を与えるのではなく、自分の裁量で自分のジョブを設計していくという考え方に依拠したものでしょう。つまり、自分で「工夫」するということでしょう。

ジョブ・クラフティングのジョブとは

次に、「ジョブ」の方を確認します。ジョブという言葉を見ると、昨今は「メンバーシップ型」から「ジョブ型」の人事制度に変更する会社も増えているため、そういう雇用形態の方向けのものかなと思う方もいるかもしれません。ただ、考え方としては、ジョブ型とは関係がなく、どのような方にも対応ができます。

「クラフティング」の目的物が「ジョブ」だということをまず抑えておきましょう。

この程度まで自分で考えた後に、文献をあたります。今回は、「50代からの幸せな働き方 働き甲斐を自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法」を参照しました。前書きでは、以下のようなものでした。

ジョブ・クラフティングとは、自分の仕事を主体的に捉え直すことで、自分らしさや新たな視点を入れて、やらされ感のある仕事を働きがいのあるものへと変えていく考え方のこと

例えとして、「仕事の中に自分をひと匙入れる」とありました。「自分みを出す」ということなのでしょう。

その後、「ジョブ・クラフティングとは」の章では、2001年のエイミー・レズネスキーとジェーン・ダットンが提唱したものとし、
「個人が自らの仕事のタスク(業務)境界もしくは関係的境界においてなす物理的及び認知的変化」
という初期の定義と、
「従業員が、自分自身にとって意味があるやり方で、職務設計を再定義したり再創造したりするプロセス」
という後の定義が紹介されています。

また、著者の高尾氏はこれらを難解とし、自身の定義として

働く人たち一人一人が、自らの仕事経験を自分にとってよりよいものにするために、主体的に仕事そのものや仕事に関係する人との関わり方に変化を加えていくプロセス

と説明しています。

次に、ジョブをクラフティングするといっても、ジョブにはさまざまなものがありますからクラフティングする「ジョブ」の解像度を少しあげていきます。

ジョブをクラフティングするとは何をクラフティングすることか

ジョブクラフティングを行う際には、ジョブの解像度を少し上げて考えるととっつきやすくなります。古典的なジョブ・クラフティングの考え方では、3つのクラフティングがあるとされます。1つがタスククラフティング、もう1つがリレーショナル(関係性)クラフティング、最後にコグニティブ(認知)クラフティングです。

この状態では、横文字が多すぎてマンネリに悩む従業員には伝わらないとは思いますので、翻訳が必要ですが、まず人材開発担当の方向けに1つずつ見ていきましょう。

タスククラフティング

仕事は複数のタスクで構成されています。タスクをクラフティングするとはどういうことでしょうか。「タスクに落とす」と言われることがあるように、自分でタスクを作り出すことです。タスクは作業と異なり、取り組むべき目標をもちますので、作業を増やして仕事をしたつもりになることとは一線を画します。つまり、自分の成長にあった目標を持つタスクを作り出す「能動的で生産的な活動」です。タスクをクラフティングするのは、これまで指示待ちだった人たちには難しいものです。だからやる意味があるといえるでしょう。

リレーショナルクラフティング

次に、関係性クラフティングです。関係性とは人と人の関係性を指しますが、自分の必要な人間関係を自ら構築し、自分に必要のない人間関係は避けるといった考え方になります。ここには、「ソーシャルスキル」が関わってきますし、ソーシャルスキルの一つである「人間関係を選択する力」も必要でしょう。

コグニティブクラフティング

最後に、コグニティブクラフティングですが、コグニティブは直訳すると「認知的」。意味づけのことです。自分がやっている仕事に対して、もし「退屈でつまらない仕事だ」と認知しているとするなら、それを「ワクワクするやりがいがあって楽しいものだ」に変えることです。(個人的には単体ではマンネリには利かないと思っています。)

これらの3つのクラフティングを行うことがジョブクラフティングの古典的な考え方です。

ただ、上述の通り、従業員向けには翻訳が必要です。当意即妙な訳はないかと考えていた際に、厚生労働省の科研費で2019年3月に発表された「ジョブ・クラフティング研修プログラム実施マニュアル」が非常に平易にこれらを表現しているのを見つけました。本マニュアルでは、タスククラフティングを「仕事のやり方への工夫」、リレーショナルクラフティングを「周りの人への工夫」、コグニティブクラフティングを「考え方への工夫」としています。上述の高尾氏の本では、業務クラフティング、関係クラフティング、認知的クラフティングでしたので、比較すると誰にでも伝わりやすい表現であるように思います。

ジョブ・クラフティングは新しい概念ですが、既に発展の歴史があります。こうした考え方が2020年代に更に理論的に発展してきています。これについても機会があれば書きたいと思います。

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