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顧客価値を原点とするトレンド変化について

ジョブ理論について書こうと思った背景にはトレンド変化がある

今回、書きたいのはジョブ理論とその周辺にあると私が考えるいくつかのビジネス上の考え方だ。

数年前に「ジョブ理論」が業界的に話題になった。昨年くらいから研修カリキュラムの中にジョブ理論を入れている先進的な会社のお話も耳にするようになっている。

私は、ビジネス書で話題になったからといって、その内容をすぐに研修やワークショップに取り入れることには懐疑的で、一旦自分の中で理解して価値評価ができないと進めない気質である。だが、ジョブ理論とそれをとりまく昨今登場したいくつか考え方は、ビッグトレンドだと感じており、それらを整理し、当社のビジネスにも取り入れていきたいと考えている。浅学ながらざっくりと私の興味領域と絡めてコラムに書いておきたいと思う。

昨今、目にすることが増えた「カスタマーサクセス」部門の背景や、その裏にあるサブスクリプションのビジネスモデルとその中核にあるジョブ理論を理解することで、私の感じているパラダイムシフトがご理解いただけるかもしれない。

ジョブ理論は顧客視点とは異なる

まずは、ジョブ理論について少し説明しよう。「ジョブ理論」は、イノベーションのジレンマで有名なクリステンセン教授による理論だ。海外では「Job-to-be-done」として親しまれているそうだ。「ジョブ理論」におけるクリステンセン教授の主張は、売り手のロジック(プロダクトのレンズ)ではなく、買い手のロジック(ジョブのレンズ)で考えるという点にある。「マーケティング」的な発想にみえなくもない。といっても、プロダクトアウトから抜け出そうとか、ニーズを知ろうという手垢のついた考え方とは一線を画す。ジョブ理論では、プロダクトアウトから抜け出して顧客を見るという単純な発想ではない。顧客ではなく、”顧客の片付けるべきジョブ(Job-to-be-done)”を見る。それを見ることで、結果としてニーズがわかるという考え方をする。

このためのパワークエスチョンとして「どんな”ジョブ”を片付けたくて、あなたはそのプロダクトを”雇用”するのか?」が挙げられている。ただ、”ジョブ”にピンとこない人もいるだろう。次項では「ジョブ」について説明する。

ジョブ理論は「進捗」を扱っている

書籍「ジョブ理論」の冒頭に「本書は”プログレス”についての本だ(訳では進歩とされているが、進捗が適切に感じる)」と記載があることを忘れてはいけない。日本語としてわかりにくい”ジョブ”とは、「求める進捗」であり解決策である。(プロダクトの対語としてプログレスを据えている。)

「ジョブ理論」の書籍名は邦題だ。原題は「COMPETING AGAINST LUCK-The Story of Innovation and Customer Choice-」で、「ジョブ理論」は「Job-to-be-done」の訳である。原題にある通り、「顧客の選択(Customer Choice)」を解き明かし、「運任せのマーケティングを超える(COMPETING AGAINST LUCK)」理論なのである。つまり、顧客の購買する「必然」をジョブという言葉で理解しようという取り組みに他ならない。

ジョブ理論は、重層的な理論ではあるが、起点はジョブの把握である。ジョブの把握では「顧客が問題解決者であり、問題を解決するために、商製品やサービスを雇用(hire)する」と考える。これは、「売り手側が顧客の立場にポジションチェンジをして解決したい問題およびその解決策(=価値)を考えること」でもあり、問題解決活動のプロセスの一部とも捉えられる。

このように書くと、問題解決研修との類似性が気になる。当社も問題解決研修を行うし、解決昔話という問題解決研修用のゲームを作っているが、そこでは参加者から「解決策ありき」の問題設定を目にすることも多い。顧客が解決したいことをありのままに捉えることができていないから、「プロダクト発想」でできることからやろうとしてしまうのだ。実はここに「あえて」ジョブに注目しなければならない理由があるのだと思う。「ジョブ」という慣用的には使われない言葉を惹句として、本質に目を向けようとしているのだ。

ビジネスモデルキャンバスの中核にも価値が据えられている

ジョブ理論よりも少し前に「ビジネスモデル・ジェネレーション」が話題になった。本書では「ビジネスモデルキャンバス」が紹介され、昨今では、当社が顧客から提供頂く資料の中にもまるで常識であるかのように自然に登場し、経営を理解する必須ツールになりつつあると感じる。「ビジネスモデルキャンバス」の中核要素にバリュープロポジション(≒価値提案)が挙げられている。買い手と売り手を介在するものは「価値」なのだから、これは本質的だ。買い手が感じる価値(顧客価値)と対価を比較した経済性で購買されるかが決まる。プロダクトの価値ではないのだ。世の中が「顧客価値」を中心にパラダイムシフトしつつあるように感じている。

顧客にとって価値の高いジョブとは?

更に、「バリュープロポジション」に焦点を絞り、詳細なアプローチを本にした「バリュープロポジションデザイン」では、まさに「ジョブ理論」が紹介されている。
「バリュープロポジションデザイン」では、クリステンセン教授のコンサルティングファーム「イノサイト」が提唱する初期理論として以下の式を記載している。

High-value jobs(価値の高いジョブ)=
Important(重要)+Tangible(目に見える)+Unsatisfied(満たされていない)+Lucrative(お金になる)

価値の高いジョブ(High-value jobs)とは、頭に「価値」とある通り、「価値」を起点として考えたものである。”重要で、目に見えて、満たされていなくて、お金になるジョブ”とはどんな「価値」を提供してくれるのだろうか。それに答えるためには、顧客価値を知ることが前提となる。何が重要で、何を満たしたいかは結局、顧客ごとのユニークなものだからだ。

サブスクリプションビジネスも「価値」を把握することから始まる

先般「サブスクリプション」について考える機会があった。

書籍「サブスクリプション」では、現在は「顧客から発想するビジネスと製品から発想するビジネスの戦い」が行われており、「サブスクリプション文化とは、自社のサービスを使ってくれている顧客に確実に成功してもらうことであり、それを自社の収益に変換することにほかならない」という記載があった。

ここで感じるのは、ここでの「顧客の成功」の原点も結局は顧客価値を知ることだ。

最近、サブスクリプションモデルの会社が「カスタマーサクセス」という部門を設け、そこから連絡があることが増えていることに気づかないだろうか。カスタマーサクセスは単なるメンテナンス機能と異なり、カスタマーサクセスは価値把握とその充足の機能を持つと考えている。そこで得た知見を開発やマーケティングやフィールドセールスに還流させるのだ。
書籍「ザ・モデル」では、カスタマーサクセスを起点として、逆の流れを作ることが提唱されているが、これも「価値」を最も把握しやすいのがカスタマーサクセスの部門だからだろう。

「ジョブ理論」で記載されているジョブの観点のうち3つは以下のものである

  • 顧客は進歩を遂げるためにどのような体験を求めているか
  • どのような障害を取り除かなければならないか
  • 社会的、感情的、機能的側面については何を考慮すべきか

これはまさにカスタマーサクセス部門が確認すべきものなのではないだろうか。
こうした活動を行うことで顧客は「進捗」が理解できるわけだ。

この「進捗」もキーワードだ。次項では、当社もマネジメント研修の一部に取り入れている「進捗」とジョブ理論の関係性について書きたい。

進捗の重要性

テレサ・アマビールの「マネジャーの最も大切な仕事-95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力」では、「進捗の法則」が紹介されている。本書の原題は”The progress principle”である。マネジメントの文脈で書かれた本なので、マネジャーにとっての部下の進捗を扱っているが、上司の顧客が部下であると考えると、ジョブ理論の文脈と重なる。本書でも、マネジャーは、部下の進捗を認め、障害を除去することの重要性が書かれており、部下は進捗を理解することでひいては「エンゲージメント」するのである。これを逆に考えるとジョブ理論はマネジメントにも適用でき、「顧客のジョブ」に限らず「ステークホルダーのジョブ」に拡張できるように感じる。

繰り返しになるが、こうしたステークホルダーのジョブを知り、進捗の実感を与えることの手前にあるのが、「人はどのような「価値」を感じて行動をするのか」という「顧客価値」の理解である。よく価値は「バリュー」と訳され、自分たちの価値観のように語られるが、それだけではない。提供価値とその裏返しである顧客価値もある。

この理解が、顧客や部下の「サクセス」につながるのだが、なぜこうしたことがトレンドになっているかというと、結局のところ、顧客は何に価値を感じるかということを徒手空拳で考えることに難しさがあるからだろう。問題解決研修で顧客目線にたてないことや、マーケティング研修や営業研修やマナー研修でわざわざ顧客目線を強調することも、結局はその難しさにあるように思う。

先日、当社の価値理解ツール「かちかち山」を使った研修に登壇し、顧客価値を問う機会があったが、参加者から「考えたことがなかった」といった趣旨の発言があった。これは、すなわち「相手目線」という考え方がそもそも知覚されていないことにつながる。

ここからは宣伝だが、価値を整理しろといっても難しいのが通常だ。価値を選択するだけで検討できるツールには価値があり、「かちかち山」にはそれができる。上記の問題解決やマーケティング、営業、マナーやひいてはプロダクトデザインにまでつながる本質的な価値を感じた。かちかち山は近日体験会を実施するので、是非遊びに来てほしい。

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