当社が断念したビジネスモデルとその理由 | ビジネスゲーム研修で人材育成を内製化 | カレイドソリューションズ

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当社が断念したビジネスモデルとその理由

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サブスクリプションモデルはネットワーク外部性が強く働くビジネスモデル

創業当時から、多くの人にコンテンツを使ってもらいたいと思ってビジネスをしている。そんな中で、定額制の「研修受け放題サービス」が活況だ。「研修受け放題サービス」のようなモデルは、ネットワーク外部性が重要になる。つまり、電話というサービスの1人目の利用者に一切の便益がないように、そのサービスに参加しているお客さんが少ない場合、うまくいかない。また、利用者が増えても継続的に魅力を打ち出していかなければならない。その点で、トーマツイノベーションさんのようなサービスはすごいなと感じている。

私たちの理念は「あらゆる人に良質な学びの場を」からはじまる。この理念にそって考えると、定額制で使い放題というのは非常にやりたいことだ。しかし、実際に考えてみたら思っていた以上に多くの困難があった。

当社に立ちふさがった4つの障害

私たちの「ゲーム」×「内製化」でネットワーク外部性に依拠したビジネスをしようと思った場合、4つの障害があった。おそらく、これは当社に限らず、比較的小規模の会社が多い研修業界にはたいてい当てはまる話なのではないかと思う。

まずは、顧客リソースの不足である。顧客をリソースというのは失礼かもしれないが、今回は上段からビジネスモデルについて書いているのでご容赦いただきたい。私たちは少人数で会社を運営しているため、お客さまに発信するにしてもメルマガがせいぜいだ。数万人にリーチできるようなメディアはない。BtoBでやっている限り、仮に2千社の3%が加入しても60社程度なのである。これでは、ネットワーク外部性が働くようなモデルにはできない。

次に、コンテンツの不足である。当社が保有するビジネスゲームのツールの数は業界屈指の多さである。しかし、世の中のニーズの満たそうと思うと、当社のラインナップではまだまだ足りない。NETFLIXだって、多くの番組があるから価値があるわけだ。質重視でやってきているが故に、現行のラインナップでは、すぐに終わってしまう。私たちには、まだまだコンテンツが不足している。一旦は、コンテンツを増やすことに力を注がなければいけない。

更に、社内リソースの不足である。研修内製化のビジネスは「手離れの悪いビジネス」である。例えば、研修内製化をしてもらおうと思うと、講師のトレーニングが必要になる。数社まとめて講師養成しようとしても、たまたま同じニーズのあるお客様が数社集まることはそうそうない。特に、比較的ニーズの少ない経営シミュレーションでは本当に難しい。更に、コンテンツ数が増えれば増えるほど、このトレーニングの数も増える。結局のところ、個別対応になってしまい、対応が困難な状態になることが容易に想定される。

最後は、モノを伴うビジネスの特性である。当社のビジネスは、インターネットビジネスではなく、モノを伴うビジネスだ。このため、仮に30コンテンツ使い放題というのをはじめようと思うと「モノはどうするの?」という話になる。例えば、契約したら100コンテンツ分のダンボールが届くというのは悪夢だ。これに上述の「トレーニングはどうするの?」が加わるとほとんど手詰まりになる。

これらの諸問題への「ずっとも」という解

上記の諸問題に対してのある種の現時点での最善の解が「ずっとも」だった。

はじめに、1年間のライセンス「にしない」。これは1年間という期間が終了しても「ずっとも」っていられるということだ。同じサービスにずっとお支払い続けていただくものをサブスクリプションモデルとすると、期間が終わったらさようならではないという点で一線を画す。

次に、トレーニングが必要なもの「にしない」ことである。トレーニングがあることで、困難が生じるのであれば、トレーニングしなくてもできる程度の「マイクロ」なものにすればよい。これが1時間という短時間コンテンツの理由である。

最後に、顧客のニーズが集中せず、集団でトレーニングできないという問題は根深い。あたりまえなのだが、研修とは問題解決の手段である。なので、個人的には複数社が集まって同じ研修のトレーニングをするというのにはお花畑感がある。どんな会社が同席するかわからない会合で自社の内情を暴露するのに等しいからだ。なので、悩んでいようがいまいが、一律で同じものが届くので、一斉に体験してもらおうということで「実演会」という新たな形を設けたのである。ここでは、問題があるから参加しているのではなく、届いたから参加しているわけなので、参加することそのものが情報漏えいだという前述の問題はきれいに解消される。こうしてスタートした「ずっとも」は、好調なセールスを収め、トレーニングを兼ねる実演会も好評である。

流行っているからやってみようはうまくいかない

どんなものでもそうだが「流行っているからやってみよう」という「ビジネスモデル・イン・ブック」的な発想はだいたいうまくいかない。そもそもなぜ流行っているのか。それはなぜこれまではなかったのか。といった洞察をすることで、「インターネットビジネスとマッチしているから」といったものが浮き彫りになる。であれば、インターネットビジネスでない私たちはどうすればよいかという問いが生まれ、新しいサービスになるのである。

私は新しいビジネスモデルはとても好きだが、どんなものも自分の頭で考え抜いてから行わなければうまくいかないのだと思う。日々勉強だ。

サブスクリプションモデルは諦めたのか

かといって、まだサブスクリプションモデルへの野望は捨てていない。今、まさに私たちの業態であればどのようなビジネスモデルがありうるかを考えている。最近、サブスクリプションモデルの提供形態を始めた同業会社があると伺い、どのようにして実現したのかと羨望の眼差しでみているところだ。しかし、他社は他社。私たちは別な確度から様々な検討を行っている。研修内製化専業として最も早く、長い期間経営している会社として「これだ」というものを打ち出したい。これからも、今後の10年の試金石となる施策が目白押しなので、とても楽しみである。

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