「若手社員のフォローアップ」という単語を聴いての雑感

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「若手社員のフォローアップ」という単語を聴いての雑感

フォローアップという名前の研修には実態がない

若手社員のフォローアップというと、新入社員フォローや、2年次研修など様々なものが想起され、漠然としているし、使い古された単語と感じるが、
若手社員のフォローアップという言葉が一周回って「今風」と感じるところがあった。

昨今、世の中が二極化していると言われる。
新入社員研修と言っても高卒者の研修もあれば、大学院卒が中心という会社もある。
また、大卒の研修と言っても、学生時代にインターンシップをしているような学生しかいないので、内容的には「就業経験ありという前提でお願いします」というオーダーも頂いたほどだ。

なので、もはや新入社員研修ならこの研修、2年目社員ならこの研修といった分け方はナンセンスだし、
「今どきの新入社員の傾向」というまるでかつての平均的日本人像が存在していた頃と同じような「答えを求める発想」がオワコン化したと強く感じる。

ということで、とある会社の5年目社員と新卒が同じようなレベルということもありうる世の中では、一周回って「若手社員のフォローアップ」という言葉が今風だ。

ここで書いた通り、若手社員のフォローアップというものには実態がない。なので、わたしたちが実際に人材育成をしている中で、これができると良いと思うものをいくつか書きたい。

認知能力を「一定水準まで」高める

昨今当社では「知覚・認知」あたりに注目している。まずは、「考えること」である。「考える」というと「ロジカルシンキング?」という話になるが、そうではない。

まずは、何を考えるべきかを考えること、この「範囲」の広さが重要になる。人は様々な情報を受信しているが、それをありのままに捉えることができていない。マインドフルネスとも通じる部分があるのだが、見えているのに見ていない、聞こえているのに聞いていない、読んでいるのに理解できていない・・・こうしたことが多いのだ。

ここには、「あえて○○というのであればきっとこういう意味があるのではないか」といったそもそもの発想の欠如がある。例えば、上司があえて自分だけに○○と言ってきたというのであればプラス・マイナスを問わず、何か意図があるかもしれない。ないこともあるだろうけれど、「可能性を想定できる」かどうかが重要なのではないだろうか。

人は成熟すると動けなくなると言われる。これはまさに成熟の過程で様々な仮定ができるようになることになるためだ。

逆に、若者は老人と比して範囲が狭い。これは人生経験が短い以上、全体を見たらそうなるのは仕方がない。こうした若者に対して必要なのは、「可能性を想定する訓練」であり、現実に多くの会社はこの手の訓練を若手社員に実施している。論理思考だって究極的にはそこに行き着く。

そうした中で、いくつか抑えておくと良い「可能性」がある。まずは、相手の意図だ。これは流行り言葉でいうと「忖度」である。忖度とは相手の真意を慮ることで、洞察の活動だ。忖度して行動するという行動が伴い、かつ忖度の間違いがあると問題化するが、人間関係上で忖度ほど重要なものはない。繰り返すが、忖度とは相手の真意を慮ることだ。この究極の姿が阿吽の呼吸である。

次に「ヌケモレ」だ。何かを聞いてもしくは何かを行って「もしかしたら何かが抜けている可能性がある」と思えるかどうかが、発見の緒になる。「うっかり」「確認不足」と言われがちな若手は、おそらく必要不可欠なことが漏れているだろう。

これをもう一歩進めると、最後に大局観の話になる。部分を見るのではなく全体を見られるようになると「おっ」と一目置かれることも増えるだろう。これも可能性の発展形だ。

ここまでは「何を考えるべきか」という範囲の話だった。

中身がきまったら伝え方を考える

考えることで中身(コンテント)が定まったら、次はそれをどう伝えるかという話になる。ここでは、コンテントが正しくかつ受け止めやすい形で相手に伝わるかを考えることが大切だ。

わたしたちは、相手に伝わる形で伝えるために「アサーティブネス」を大事に思っている。アサーティブを交渉学におけるZOPA(Zone of possible agreement)と対比して考えると、アサーティブは、アグレッシブ(攻撃的)とノンアサーティブ(非主張的)の中央にある領域(ZOPA)と考えられる。(※ZOPAでは重複部分なので、厳密には線分の切り方が違う)

アサーティブネスを学べば、自己表現ができるようになり、受け止めやすい表現を通じて、最終的には自己が受容されているという感覚に至る。この点でアサーティブネスは必須のビジネススキルである。

日々の人間関係構築の起点となるストロークを学ぶ

ただ、このZOPAが元々狭い場合、アサーティブな表現というのは難しい。ZOPAを広く維持できるかどうかは、日々の人間関係によって決まる。日々の人間関係については「ザイアンス効果」が有名だ。ザイアンス効果は単純接触効果と呼ばれ、印象は接触回数と比例するという考え方だ。これは、ザイアンス効果と同じく、心理学者のフェスティンガーによる親しくなる3要件に含まれる。

ここでは交流分析等でよく用いられる「ストローク」という考え方が重要になる。ストロークは、肯定的なものと否定的なものがあるが、肯定的なストロークを積み上げることで、人間関係は構築され、継続されることで改善される。

こうしてストローク等を用いて、基本的な人間関係が構築されていると、同じ物言い、態度であっても受け止められやすくなるのだ。

まとめ

伝えるべきことを洞察し、それを他者にアサーティブに伝え、反応をもらう。コミュニケーションはこの反復である。そして、その基盤となるのが、ストロークによって培われる人間関係なのである。

上記のコラムは、2019年6月に、2018年のそれいけ!ソンタックの開発時に考えていたことを書いたものだ。本コラムは、その後の「関係構築」の話につながることになった。2023年の今、公開するのは、この内容を受けて、数々のコンテンツが出来上がってきたからだ。

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