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フィードバック力向上ツールの開発背景(中)

「光る行動」だけにフィードバックして引き上げるというお客さまの声

以前、とある会社に「イエナイヨ管理職版」を提案して失注したことがある。「イエナイヨ管理職版」の開発当時は、問題行動へのフィードバックをできない管理職が増えていることへの対処が求められていた。過剰な「パワハラ防止施策」へのカウンターとして、「アサーション」がその解決策として有効だとする。その認識は今でも変わらない。

しかし、その会社では「問題よりも良い点をより伸ばす」マネジメント研修を志向していた。管理職が部下にフィードバックを行う際には、「光る行動」を認め、促すことが必要である一方で、「イエナイヨ管理職版」は「問題行動」と「光る行動」(に見えないかもしれないが)が必ずセットになっていて、「光る行動」しかないものがなかった。この意見は貴重な意見だった。これが「光る行動」に目を向けるきっかけになった。ただ、もちろん一般的な会社では「問題行動」も多いだろうから両面に目を向けなくてはならない。

嬉しくない「褒め」がある!?

トナリノココロ」の参加者の様子に加えて、日本ポジティブ心理学協会のイベントにコンテンツ提供をしたことや、ポジティブサイコロジーのスクールでのコンテンツ開発協力をしたこともあり、「承認」を基本とする「褒め」は幸福感を高める効用があり、それが良いという認識を強化する一方だった。しかし、それは思い込みであった。その後、当社のメンバーが増え、部下指導の対象や実務を通じて成功・失敗を重ねる中で「フィードバック」観に少し変化があった。結論から述べると、「褒め」だけではうまくいかないということだ。

もともと私はフィードバックはするのもされるのも得意だとは思っていない。フィードバックをされる側としては、「褒め」ばかり受けてもさほど嬉しいと感じない。若い頃はそれでも嬉しかっただろうが、耳年増になりすぎてしまったためか、「お世辞」の連続のような人に出会うと辟易としてしまうし、特に、「天才ですね!」とか「能力や才能」ばかり褒める人は、自分のためにならないので継続的に付き合おうとも思わない。この手の褒めは正直なところ「うさんくさい悪い褒め」だ。もちろん、かといって、ぞんざいに欠点ばかりを指摘されても心地よくない。

結局、褒めの一部には弊害すら強く感じるようになった。例えば、「ほめると子どもはダメになる」(榎本博明)では「言語的報酬」の概念でそれを説明している。これは前述の「能力」と「努力」の話と近い。褒めれば良いわけではなく、「So what?」つまり「何を努力すればいいの」を洞察できないとあまりおもしろい結果につながらない。

そもそもフィードバックする側は部下や後輩の良い点を発見できるのか

では、なぜそんな「うさんくさい悪い褒め」をしてしまうのかというと、相手が嬉しそうだとこちらが安心するからだ。褒めることには相手を嬉しくする効果がある。そして、誰でもいい人でありたい。だから「天才!」のような相手が喜びそうな褒めを連発し、相手のまんざらでもない様子を見て、「うん、良い関係が築けている」と安心するのだ。ただ、これは馴れ合いの関係であって友人間では良くてもに過ぎない。仕事ではよろしくないというのは前述のとおりだ。

では、どうせ褒めるなら「努力」を褒めれば良いではないか。ところが、私たちの多くは仕事で長い期間の経験を積んでいるので、歳が離れた部下や後輩の努力や成果を見ても、欠点ばかりが目に付いてしまい、そもそも褒めるような努力が見つけられない。自分を振り返ってもやはり、フィードバックする側としては、部下・後輩の良い点がザクザク見つけられるタイプではないし、むしろ問題発見の方が得意なタイプだ。褒めるべき努力が見つからなければ、能力や容姿などを褒めるしかないだろう。多くのフィードバックが、うさんくさい褒めや説教になってしまう。

そもそも褒めるところに関してだけ「発見力」がない

多くの人は、褒めることが重要だなんてことはとっくの昔に分かっている。フィードバックする側には褒める気がないわけではない。褒めるところが見つからないから褒めることができないのだ。つまりこれはやる気の問題でも意識の問題でもやり方の問題でもなく「発見力」の問題なのだ。

例えば、Aくんは、毎日遅刻をしてきて身だしなみや態度も勤怠もよくない。マナーも良くなければ営業成績も良くなく、やる気も見られない。たまに行った工夫といえば、メモの取り方を変えたくらいだ。そんな彼とたまたま少し話をする機会に恵まれたとしよう。その際に、相手に「メモ」のことをフィードバックできるだろうか。全部の欠点を指摘してフィードバックを終えた後に、「あ、メモのことを言い忘れた!」と後悔するのが「あるある」ではないか。

「発見力がない」という問題に対して、褒め方や褒める重要性を説いても的はずれだ。「発見力」は私たちが最近注目している言葉の一つで、ある程度資質による部分がある。「それいけ!ソンタック」のデザイナーズノートで書いたように、人はマイナス状態には気づきやすいがプラス状態は発見しにくいというのもあって発見できないというのもあるだろう。

そこで、「FB職人」では、「進捗を発見する」というアプローチを中心に据えた。フィードバックを行う際に必要な「進捗」を行動事例から発見する活動を行うことで、「それいけ!ソンタック」で実現できたような「進捗」を発見する「アンテナ」が立ち、発見力の向上につながると考えたのだ。

【コンテンツ】フィードバック力向上ツール「FB職人」

フィードバック力向上ツールの開発背景(上)

フィードバック力向上ツールの開発背景(下)

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