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財務分析用語暗記ツールの開発背景(後)

「財の記憶」では何を記憶するか

こうした問題意識から、「財の記憶」は、前提として「社会人経験があり、会計用語を目にしたことはあるが、意味や内容はわかっていない」といった対象設定をしている。

また、「財の記憶」は、意味の理解よりも用語の「式の暗記」に焦点を絞った。このため、除外したものもある。まず、式の暗記より手前にある財務用語の意味は本研修の範囲外とした。また、式の暗記よりも後ろにある具体的な分析活動は入れていない。これが財務会計の死の谷を埋める一助になれば幸いだ。

なお、まだ暗記することがなぜ重要かという理屈がすっきりしていない人もいるかもしれない。とても読みにくいとは思うが、以下で説明をして「開発背景」を終わりにしたい。

思考の六段階の初手は「暗記」にある

「知っているのにできない」とか「知識を応用できない」などの話で常に登場するのが、「ブルームの分類学(Bloom’s Taxonomy)」やその別名である「思考の六段階」である。これは「知識」を運用するプロセスを段階にわけたものだ。

思考の六段階は、1956年に提唱された歴史あるフレームワークで、認知の過程を「知識、理解、応用、分析、統合、評価」にわけている。こちらは、2000年代に入ってブルームの弟子による改訂版がでて、「記憶、理解、適用(もしくは応用)、分析、評価、創造」となった。上位の「統合、評価」が「評価、創造」に入れ替わり、1つ目が「知識」から動作よりの表現である「記憶」に変わっている。

ブルームの分類学で重要な点は、学習には段階があるという原則だ。これが「財の記憶」「ザ・フレームワーカー」「配置全部A(未発売)」などの背景になっている。

学習の原則は以下の通りである。
・ ある概念を理解する前に、それを記憶しなければならない。
・ それを適用する前に、理解しなければならない。
・ それを分析する前に、応用(適用)できなければならない。
・ その影響を評価する前に、分析できていなければならない。
・ 創造する前に、記憶、理解、適用、分析、評価ができていなければならない。

つまり、記憶できていないと適用は無理なのだ。この当たり前の話が実は企業研修、特に外部に委託する研修では抜け落ちていることが多い。死の谷を超えられないのは、使えるレベルまで記憶できていないからだ。まずは記憶し、理解すること。それが「知覚」であり、知覚できているから応用できる。

各社が財務分析を学習することで目指すところの一つに、財務諸表を見て、「これは●●率が低めなので・・・」と式や数字を使った単なる計算を超えた水準の適用がある。しかし、講義を聞いて記憶できることは稀だ。まず、注意・関心を惹かなくては脳に記銘されない。記銘されなければ、記憶の引き出しが引き出されることはない。分子と分母の関係が何を表すかの理解を飛ばして、実践で適用させようといっても無理なのだ。

改訂版ブルームの分類学を使って考える

「子供の学力の新観点『思考コード』を知っていますか?」というエントリがバズった。このエントリは改訂版ブルームの分類学を応用したものだ。思考の6段階を「いかにして知っているか(認知過程次元)」軸とし、この軸に「事実、概念、処理、メタ認知」で構成される「何を知っているか(知識次元)」軸を新たに加え、かけ合わせてマトリクスとし「タキソノミーテーブル」と呼ぶ。これを学校教育の世界では様々なアレンジで展開がなされ、「思考コード」と呼ばれている。学習塾が作成したものが以下だ。
思考コードの図
(出典:子供の学力の新観点「思考コード」を知っていますか?)

横軸は、思考の六段階を2つずつの固まりにしてある。縦軸は、恐らく「事実・概念」「処理」「メタ認知」の読み替えだろう。縦軸を「記憶」で例示すると①記憶した事実を言えますか?②記憶した事実に関連する情報を選べますか?③記憶した事実が全体の中でどこに位置づけられるか分かりますか?という問だと思えばわかりやすいのではないだろうか。財務分野で言えば、①売上―売上原価は何ですか?②売上総利益はどのように求められますか?③売上総利益は損益計算書のどの位置に置かれますか?といったものだろう。

これを私が使いやすいようにまとめたものが以下である。
思考コードのまとめ
企業研修では、「実務に使える研修を」と言われるが、実務に使えるの「使える」は適用だったり、「創造」だったりする。しかし、それを実現するためには、もっと手前の「記憶」が重要なのだ。「大人であれば●●位覚えているでしょう?」という忖度はもういらない。

私が思うに、企業独自のテクニカルな教育では、記憶や理解が重視され、テストなどが多々行われている。しかし、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキル、ビジネススキルといった分野ではここがかなり軽んじられている。こうした研修にも話したからといって覚えるとは限らないという前提で、各研修に「記憶・理解」を促す仕組みをいれるべきなのだ。

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