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段取り力向上ツールの開発背景(後)

段取りは、広義の段取り(優先順位付け)と狭義の段取り(計画)に分かれる

さて、ここからは、段取りについて書きたい。段取りという領域の全てを書くことは難しいが、当社の段取り研修で教えている内容は概観できると思う。

段取りという言葉は比較的範囲が広い。例えば、朝出勤して、どの仕事から着手しようかと考えるのも段取りである。また、仕事に着手するにあたって、どのように進めようかというのも段取りだし、自分で思いついたやり方を周囲に展開し、合意を得てから進めるのを段取りだと思う人もいるだろう。

当社では、段取りを手順で2つに分け、段取りの縦軸としているが、とある客先で研修の前半に「priority setting」後半に「planning」という名前がついた。性質が異なるということだ。

段取りの手順はまさにこの2つなのであるが、段取りの経験が浅いと、この2つを混ぜてしまう。これらを簡単に解説したい。

段取りとは何か①優先順位付け-洗い出しと優先度-

まず、仕事全体の段取りである。仕事をどのように進めるかは各自の判断に任されていることが多い。しかし、判断が適切でない場合、成果の出ない活動に注力し、成果が出ず、積み重なると、会社全体の業績に悪影響が出る。適切でない判断が生まれる一つの理由は、仕事が大小様々なタスクで構成されていたり、すべきことがわからないことがあるからだ。「何をなすか」を定めることが段取りの中で最も優先順位が高い。

この優先順位の定め方、俗にいうプライオリティ付けは、「緊急度・重要度マトリクス」を用いて行う。ベストセラー「7つの習慣」で「時間管理のマトリクス」と呼ばれるものと同じものだが、ここでは「緊急度・重要度マトリクス」と表記する。

「緊急度・重要度マトリクス」では、語義の通り、緊急度・重要度の高低で4象限を作り、優先度をつける。当然ながら、重要度が低かろうが、緊急度が最高のものは着手せざるを得ない。例えば、社長であろうが、緊急度最高で誰かに依頼する時間すら取れないものは、その手を動かさざるを得ない。ここでの教訓は、緊急度と重要度がともに高いタスクを優先しつつ、同時に緊急度は低いが重要度が高いタスクを進めておかないといけないことだ。

また、前提として、緊急度と重要度の高低は、タスクを比較して相対的に決まることを忘れてはならない。タスクをきちんと洗い出さずに優先順位付けをしても、後から続々とタスクがなだれ込んできてしまう。なので、まずはタスクの洗い出しをし、その後で優先度をつけるのが定石だ。

ちなみに、タスクというと、大きな仕事をイメージするが、ここでは大小様々なものが入り乱れていて問題ない。ここでタスクの粒度を問うことに意味はない。一旦、気になっていることを全て洗い出すと良い。ここまでがpriority settingの話となる。

余談となるが、ここでいう「洗い出し」は、発散と収束でいうと発散にあたる。洗い出しでは、徹底的な発散が求められる。この「発散」はゲームシステムの一つに「ラテラルシンキング」を採用する理由ともつながるが、この話はデザイナーズノートに譲りたい。

段取りとは何か②非定型業務に有効な明確化・分解・逆算

ここからはplanningの話だ。優先順位付けの結果、優先度が高いタスクが決定する。仕事には定型業務と非定型業務が混在しているが、定型業務は文字通り定型なので、暗黙的もしくは明示的にやり方が定まっており、あえてそれに計画を立てるほどのこともない。難しいために計画が求められるのは、非定型業務である。

非定型業務には2種類ある。目標が定まっていないものと、やり方が定まっていないものだ。両方定まっていないこともある。いずれも定まっていればそれは定型業務である。目標が定まっていないものに対しては、目標の明確化が重要だ。また、やり方が定まっていないものは、目標から逆算して分解したり、逆に分解してから、逆算したりする。また、時には分解してからやり方の明確化をしたりすることもあり、明確化・分解・逆算は、行ったり来たりする。

なお、各タスクの計画の際には、優先順位付けは行わない。なぜかというと、分解・逆算の過程で、どの順番に処理をするかは自ずと決まってしまうからだ。優先順位付けはあくまでもタスク間の優先順位付けの話なのである。

私を病的忙しさから救ってくれた3つの段取り術

恥ずかしながら、私は社会人になってからというもの毎日長時間労働である。自分自身の理想が高いために「やるべき」に押しつぶされがちで、自分で会社を起こす前は、「やらされる」仕事の多さにかなり悶々と悩み、就寝前にもやるべきことが気になって眠れない時期があった。

こうした状態だと、寝不足で能率は落ちるし、重要な仕事は些末な仕事の多さから全く着手できないし、重要度は高いが難易度が高い仕事になると億劫で、手が動かせずつい些末な仕事をして仕事をした気になってしまう。こうしたときに、3つの段取り術が救ってくれた。

まずは、GTDである。GTDでは、頭の中から全ての気がかりを洗い出し、それを書き出し、「記憶しない」ことを勧める。私は、様々なことを「覚えていた」からいっぱいいっぱいになっていた。以降、使い始めたタスクリストがあることで、「思い出す」手間がなくなり、一旦全部忘れても、リストが思い出させてくれるので、自分が仕事をコントロールするのではなく、リストが自分をコントロールするようになり、ずいぶん気持ちが晴れた。これは、本コンテンツでいえば、洗い出しにあたる。

次に、難しい仕事にどうやって手をつけるかである。難しい仕事に直面すると、フリーズする社会人は多い。私もこのひとりだった。フリーズして悩んでいても実は全く仕事は進まず、投入した時間分だけ効率は落ちていく。デカルトは「困難を分割せよ」といい、ビル・ゲイツは「問題を切り分けろ」と言った。実は、こうした問題を分解し、手がつけやすくすることには、非常に目に見えやすい効果がある。問題を分割することで、できることと出来ないことが明確になり、できることは進むので「進捗」の実感があるのだ。

「マネジャーの最も大切な仕事-95%の人が見過ごす『小さな進捗』の力」では、マネジャーは部下の「進捗」を支援することが重要だとしている。ただ、これはマネジャーの話に限らず、マネジメントの話なので、セルフマネジメントにも等しく転用できる。自分の仕事をマネジメントする上で、仕事が前進していることは、直接的なフィードバックに繋がり、最高の動機づけになるのである。こうして仕事が進み始めると、強いやる気が生まれ、難しい問題も働きかけて解決したい気分になってくる。これは、本コンテンツで言えば、タスクの分解にあたる。

当社のストレスコーピングパックでは、問題解決アサーションレジリエンスをセットにしているが、問題が解決できることはストレスを軽減できるのだ。

最後に、納期を決めることである。特に、顧客と納期を決めることだ。難しいが緊急でない仕事に手が付かない理由は、それが緊急でないからだ。そうしたときには、あえて緊急にしてしまえば良い。例えば、このずっともにしてもそうだ。ずっとものコンテンツ群は私がずっと作りたかったものばかりだ。ただ、きっと放っておいたら一つも完成しなかっただろう。ただ、みなさんと2ヶ月に一度という納期を決めることで(ときに3ヶ月に一度にしたい気分にもなるが)一度も納期に遅れずに提供し続けられているし、その中には、数々のチャレンジと成長があるのだ。こうした「チャレンジと成長」は自分たちの可能性と効力予期を高めてくれる。これは、本コンテンツで言えば、明確化と逆算にあたるだろう。

タスクとTODOはフラクタル?

一旦話を元にもどそう。分解され、行動に落ちたものを「TODO」と呼んでいる。「タスク」と「TODO」の違いについては、もしかしたら研修中に質問があるかもしれない。稀に明確な違いがあるとしている書籍もあるが、私の認識では、両者はフラクタル なもので、タスクを分解するとTODOとなるが、例えば、私にとってはTODOでも、若手にとってはまだまだ粒が大きいということはある。なので、TODOを更に分解(細かく分解することを細分という)したTODOから見た場合のTODOはタスクになる。書籍などでは、行動の最小単位がTODOだというものが見られるが、究極的にはキーボードでAのキーを叩くといった抹消的な細分化になってしまうので、現実的ではないと考えている。

ちなみに、個人的な仕事術としては、はじめから後工程まで細かく分解すると、数が多すぎて意欲を削いだり、前工程の変化によって後工程が変化し、細分化の意味がなくなることもあるので、序盤は前工程だけ細分化し、後工程はざっくりと時間だけ見積もっておくと、ことが動きやすいと思っている。

段取りの範囲は「計画」で終わるか?

ここからは、好みが分かれるのだが、段取り、つまりplanningをしたあとは、実行と評価 を行うことになる。ここまでを含めて段取りとするかは好みの問題だ。私は、段取りは計画で完了すると思っている。ただし、実行中に想定される問題やリスク要因を想定しておく必要があるため、予め実行上の問題点までは触れておくことが質の良い計画につながると思っており、そのため実行について一部触れ、「時短」としている。

時短とは、少し専門的な用語を使うと「クリティカルパス」を短くすることである。裏を返すと、クリティカルパスの長期化を防ぐ工夫も時短である。これには、可変時間作業にリソースを投入するなどの時短系のものと、前後工程との連携を取ることや二重作業や手戻り を防ぐことなどの長期化を防ぐものがある。ゲームでは、後者を中心に盛り込んだ。

ここまでをまとめると、まず、仕事全体を俯瞰して、タスクの優先順位付けを行い、何をなすべきかを定める。その後、そのタスクが非定型(普通は非定型だと思うが)の場合は、目標設定と分解・逆算を行き来しながら、長期化を防ぎつつ、時短することが段取りの幹となる活動だといえる。

他者が絡むと必須になる「握り」とは何か?

ただ、これは個人で仕事をする際の話で、「段取り概念図」でいえば、縦軸にあたる。ただ、タスクを個人で実行することはさほど多くない。多くの場合、タスクは「プロジェクト」として小集団でマネジャーの元、分業しながら行われる。集団での仕事はでは、ステークホルダーとの「握り」が必要になる。この握りは、いわゆるホウレンソウや、WBSによって行われる。ステークホルダー間で握った、つまり合意が得られた状態で進めなければ、プロジェクトは安易に手戻りし、円滑には進まない。

例えば、研修ゲームの開発では、どんな学習目標で設計するかを握らなければ何一つ進まない。また、デザイン工程に入るのであれば、コンセプトである「ゲーム名」とそこから落とし込んだビジュアルイメージを徹底的に握らなければならない。優先順位一つをとっても、主観的に優先順位を決めるだけでは十分ではなく、他者が介在する場合は、間主観的に決めなくてはいけないのだ。

こうした握りを行わずに進めると、たいてい手戻りとなる。手戻りは、二重作業なので、その分時間を消費するため、その分後工程が遅れ、後工程で、もしくは後工程の担当者が追い詰められることになる。

よって、上記の段取りの幹となる活動と合わせて、「握り」が両輪となって、段取りはうまくいく。本ゲームは、「段取り」をテーマとしているが、その点では、実は「ホウレンソウ」の学習ツールという側面もある。

仕事の段取り力向上ツール「段取りチキン」

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