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自分ごとをテーマにした情報受発信力向上研修の開発背景(後)

忖度はなぜネガティブな意味を持ったか

忖度の話に戻ろう。忖度とは、「相手の真意を推し量ること」である。政治やスポーツに絡めて使われたことで、やや否定的なニュアンスを持つようになったが、忖度をより簡単に言えば、「気が利いていることであり、そのために思考していること」である。このため、忖度はむしろ推奨されるべき大切な概念と考えている。

カード「忖度概念図」をキットに同梱した。これにあるように、上司の真意は上司の言動(発言+行動)として部下に届く。その言動から部下は上司の真意を推察し、行動を考える。思考にはヒューリスティックがつきものだ。考える際には、推論の是非を確認することが重要だが、コミュニケーションを取らずに推論が誤っていた場合は独断専行となってしまう。政治における忖度は、推論の誤りにより真意と異なる行動をしたことが問題だった。気を利かせることが問題ではない。

忖度の構造」 を著した榎本博明氏は、「職場では忖度して動くことがほぼ自動化している」という。空気を読んで、独断専行することが自動化されているのが実態なのであれば、真意を推論するスキルを高める教育には意味がある。

さまざまな教育は態度に帰結する

研修効果測定で活用されるカークパトリックモデルの新版では、態度の要素に「重要性認知」をあげる。重要性認知とは、重要と思っていなかったことを重要と認知することだ。これが認知できれば研修効果があったと言える。

忖度することは態度である。今回は、忖度の重要性を認知することを学習目標とした。自分だけではなく、自分の周囲に関心を持ち、何か期待されているのかもしれないと考えて仮説を立てる。そして、コミュニケーションを通じてその仮説が妥当かを「握る」必要がある。

当社のアサーションゲーム「イエナイヨ」では、「言いたいことや聞かなくてはいけないことがある」という環境設定で研修を行う。しかし、現実では「言いたいことや聞きたいことがない」こともある。なぜ言いたいことも聞きたいこともないかというと、確認するべき仮説が存在しないからである。仮説とは何かを説明しようという意思によって生まれるので、自分ごとの範囲が狭いと仮説を立てるために思考する必要性がないのである。

人材開発では、目に見えている様々な問題を突き詰めると、態度や素質の問題に帰結する。態度は変容しにくいので、態度が顕在化した行動を是正するアプローチが選択されがちだが、行動をなんとかしても態度が変わってないと最終的には元の木阿弥となってしまうため、態度の学習は重要なのである。

忖度が上下関係を円滑にする

学校での教育がアクティブラーニング 中心に徐々に変わりつつある。学習指導要領が改訂されること、また、センター試験も2019年でなくなり、大学入学共通テスト として、「探求」に大きく軸足を移しつつあり、世の中は思考を重視する方向に動いていて、私も学生と接する中で学校教育が変わっていることに驚かされる。

昨今の若手は以前の若手よりも考えて動くことに強い動機を持っている。しかし、自分で考えて動きたいのに、何をどう考えてよいのかわからない。また、自分のことであれば動けるが、組織に入った途端にどう動けばよいかがわからず、判断軸もないために動けない。結果として、「指示待ち」「気づけない」「気が利かない」「勘が悪い」「考えていない」など忖度力の不足で断罪されているのではないか。これは勿体ないことだが、若手が発信に気づけないことが多いのもまた事実である。私はこれを受信の問題、有体にいえば「アンテナの感度が鈍い」と呼ぶ。

更に、これに拍車をかけているのが時代背景だ。上司はパワハラを恐れ、ハードマネジメントを避け、婉曲表現を好む傾向がある。また、各種研修や市販の書籍や上司からの薫陶などが「正しい」ものとして蔓延していて、対象によらずそれを適用してしまうことや、コーチングの理解不足による「なぞなぞ上司」や「禅僧型上司」などの奇行種が増加中であり、相手を問わず質問で考えさせることを是とする誤った部下指導も広がっている。指示が指示に見えなくなってきている時代なのだ。私はこれを発信の問題、有体に言えば、「発信機の故障」と呼ぶ。

少し脱線すると、私も年を取ったのか、全てを懇切丁寧に説明することを無粋と感じるようになりつつある。また、マネジメント経験が長くなり、徐々にエネルギーを使う指示・命令ではなく、婉曲表現で思考リソースを省エネしたくなっている。更に、コンサル業界が長いので、部下に「こういうことですよね」と確認をとってもらい、「イエス・ノー」で返事をしたくなっている。コンサル業界の流儀が広がっている昨今では、基本的に「何をしたらいいですか」という「教えてちゃん」に指示をするのはよほど親切な上司 だ。「何をしたらいいですか」に対しては「君はどう思う?」であり、「私は●●と思います」に対して、上司は「イエス・ノー」で答える。これが普通だと思ってしまうとますます発信機はポンコツになっていくのだ。

話をもとに戻そう。こうした中では、受信機と発信機をなんとかすることがショートカットだ。受信機の感度を改善するには、外界へ興味関心を持ち、外界で起こっていることが「もしかしたら自分に関係があるかもしれない」と感じ取れるようにすることだし、発信機の故障を直すには、自分が当事者として発信が極めて分かりにくいことを実感することである。

コミュニケーションの古典的なモデル

上司と部下それぞれに「発信できていない」「受信できない」の問題があるのが古くからの現実である。ここまでを見て、コミュニケーションの古典的なモデルである「シャノンモデル」を想起した人もいるだろう。

シャノンモデルについて簡単に説明しよう。シャノンは、機械と機械の通信を、①情報をエンコードする段階、②エンコードされた信号を送信する段階、③受信した信号を復元(デコード)する段階に分けた。これをコミュニケーションに適用したのがウィーバーである。

乱暴かもしれないが、このモデルをざっくりというと、人は頭の中に伝えたいコンテンツがある。これが口という発信機を使って音声的に発信される。発信する際には、様々なノイズが入るために完全に再現されない。これが相手の耳に入り、相手の思考のフィルタを通して理解される。この往復がコミュニケーションである。

研修では、上司の発信の精度を上げるために様々なアプローチが取られているが、研修と研修の間で学習内容が矛盾し、ダブルバインドになっているのが上司の置かれている状況である。「指示は明確にしましょう」「考えさせることが重要だから質問しましょう」では、上司は動けない。重要なのは程度である。どの程度なら部下が指示・命令を正しく受け止められるのかを知ることで、上司は部下指導のさじ加減が分かる。

また、部下も「指示・命令されるもの」という認識では「指示書がないと動けません」という人材になってしまう。自走できる人材は忖度して動くのだ。しかし、忖度を教わることは少ない。これまでの当社の数々の研修と同じく、忖度はできれば対応が急激に早くなる魔法の杖なのに、教わることのない研修の死角なのである。

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