研修参加者からケースのリアリティについて問われたら | カレイドソリューションズ

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研修参加者からケースのリアリティについて問われたら

ゲーム研修で、事例を記載したカードを用いる際に、よく出てくる批判があります。「実際に起こっていることと違う」とか「現実と違う」、「だからできない」「やりにくい」というものです。

結論からというと、この批判は筋違いです。ただ、これが筋違いであると理由と共に断言できる人は多くないのではないかと思います。今回は、この批判が筋違いであることを書きたいと思います。

前回書いたジレンマ問題型のケースと線引き問題型のケースの話も併せて読むと理解が深まるかもしれません。

3つの批判への対策

まず、この批判は3つのことに起因しています。教育活動に関する理解が浅いこと、学習手法への理解が薄いこと、拒絶反応です。

教育活動に関する理解が浅いこと

まず、「教育活動に関する理解が浅いこと」です。そもそも、教育活動は「できないこと」を「できること」に変えるために行われます。

「できること」は基本的には教育の中心にはなりません。できることが教育の中心になったとするならば、企画側の対象者の分析が誤っています。

学習手法への理解が浅いこと

次に、「学習手法への理解が浅いこと」ですが、これを説明するには、先んじて、人の思考を説明する必要があります。

人は、見たことがあるものであれば、頭の中にある処理パターンをフル活用して処理を行います。ただし、見たことがないものには、処理パターンが存在しないので、思考して処理します。その結果、それが新たな処理パターンとなります。

こうした思考を通じて、新しいパターンが獲得されるわけですから、これまでにない思考パターンを獲得するためには、これまでに見たことのないもので学ぶ必要があります。だから、学習手法として「実際に起こっていることと違う」とか「現実と違う」ものが意図的に組み込まれるのです。それが普通なのです。

拒絶反応

最後に、「拒絶反応」です。人はめんどくさいものを嫌います。これまでに経験した処理パターンで対処できるものは「安全」でめんどくさくありません。失敗せず、その生温い場所は心地よいものです。

更に、人は保守的です。新たなものはできることなら排除したいと思っています。だから、拒否反応が起こるのです。ただ、それを乗り越えるのが研修ですね。

思考せずに、パターンで処理できるようになることを成熟ともいいますが、変化の速い環境では、そのパターンが通用しなくなることがあります。

そこにメスを入れることができるのが「実際に起こっていることと違う」とか「現実と違う」事例です。

現実は、その人の中にしかありません。別な人から見たらそれが現実そのものということもあるのです。当社は、基本的に現実に起こった事例を捨象して事例を作成します。なので、単に「見えている世界が違う」だけだと解釈しています。

この筋違いが合理的な理由を持つのは、そのシミュレーションが「職場を想起させたい」という目的で実施され、職場において「研修でも同じ事例があった」と想起させようとしている場合だけかなと思います。

★余談:以前にも書きましたが、「表層要素の類似性」による想起と呼ばれます。

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