成果のでない若手を対象に実施した勉強会の発掘【温故知新PJT】 | カレイドソリューションズ

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成果のでない若手を対象に実施した勉強会の発掘【温故知新PJT】

勉強会とは何か

2008年の創業当時、ゲームの研修ともう一つ軸にできるかなと考えていた事業があります。その事業は「勉強会」事業です。前職時代にこうしたビジネスを生業とするコンサルタントと出会い、色々と教わる中で、試してみたいと思い、手探りで実施したものでした。まだ売り物すら整っていない当社が食べていくための職場のリアルを知る必要がありますから、そのネタ探しという側面もありました。

勉強会は、研修の一つと呼べるものか分かりませんが、対象人数が数名と非常に少ないのが特徴的です。今であれば、参加者のスキル合わせた「アダプティブラーニング」の一つの形と呼べるものかもしれません。こうしたものは外注するものではなく、部署単位で個別に実施するものだというイメージもあるかもしれませんが、外部者、特に教育に詳しい外部者の目で行うことで、社内で行うのとは少し違ったアウトプットが出せます。

当社としてビジネスの形で勉強会を開催したことが一時的にあり、今回はそれについて書きたいと思います。

ローパフォーマーのパフォ-マンスを勉強会で何とかする

僅か3名を対象にした勉強会を、某社の悲痛な相談を受けてお引受けしました。創業からわずか4か月後、まだ信用のない当社を信頼して発注いただけたお客様の案件として、当時の持てる力を全力で尽くして取り組んだのを覚えています。

3名は有り体にいうと、評価制度上のローパフォーマーであり、本企画は「若手社員フォロー研修」という名前がついてはいたものの、若手社員がみな本研修に呼ばれているわけではなく、実質的にはローパフォーマー研修なのだと言われていました。

勉強会というと一度きりというイメージがあるかもしれませんが、本研修は全6回で構成される企画です。内容的には、アクションラーニング的な研修で、各回の課題を次回までに実施してきて、その結果をレビューしていくのが中心となります。企画の骨子はあるものの、各回で何を実施するかは予め決まっているわけではなく、各回の内容を受けて、流動的に実施内容を決めるというものです。このやり方は、カテゴリーキラーと呼ばれる単一の研修商材しかもたないベンダーには実施ができず、それまでにノウハウを蓄積してきた経験を活かせるものでした。特筆すべき点としては、単なる勉強会ではなく、ゲーミフィケーション的な手法も活用したことです。実施のための動機付けとして、スタンプ形式を採用し、各回で行った課題について、上司に報告をするとスタンプがもらえるという仕組みにしました。

手順は以下の通りです。

実施の前段階で、上司数名と面談し、彼らの感じる部下の問題点を聞きとります。その後の実施では、部下たち本人の認識を初回のセッションでブレインライティングという手法を用いて引き出します。その上で後に続き5回で必要と思われる知識やスキルを一回2時間程度の夜間セッションで補っていきます。そして、折り返し地点では、上司面談もいれていく、こんな企画でした。

その中には、ロジカルコミュニケーションホウレンソウ段取りビジネスマインドなど、今でも活躍しているコンテンツとつながるものも多々あります。

実施してわかった重要ポイント

初回を実施したところ、コミュニケーションが要領を得ないことが分かりました。だらだら話す、質問に答えていない、整理されていない、考えた割にアウトプットの質が低い、時間に来ない、返事をしない、他責などさまざまなものがわずかな時間で観察された。確かにこれでは成果がでなくて当然です。

人事と相談の上、ひとつづつ順を追ってノウハウを提供していくことにしました。

二回目では、ケーススタディを開発し、ロジカルコミュニケーションをベースに実施しました。ケーススタディは「松田さんの煩悶」といってホウレンソウに関するケーススタディです。

三回目では、伝える型の復習と、前回実施からの活動の結果をロジカルコミュニケーションで伝えるといったワークをした上で、アサーティブコミュニケーションを実施。概念の理解と、DESC法などを実施しました。(実績豊富なアサーティブコミュニケーション研修の「イエナイヨ」に先駆けること5年。こうした蓄積がイエナイヨの開発に繋がっています。)

ここで折り返し地点なので、上司の方々にレビューを行いました。レビューでは、目標達成への「意識」の話に終始しました。研修で出た課題を実践しないことが相次いでいたのです。私はそれまで性善説が少なからずあり、研修を実施したのちには、事後課題は当然に実施してくれるだろうと思っていました。ただ、それは絵空事で、現実にはそこまでの動機がない人が多く、特に今回のような場合は、「やらない」が積み重なってローパフォーマーになっているわけですから、やらないことを前提とすべきだったのです。

上司の方からは、目標に対して、以下のような考え方を提示されました。16年も前の話ですので、現在の物差しでは厳しい書きぶりにみえますが、現在でも言わないだけでこのような基準があるのは当然なので、あえて記載します。

  • 100%=会社に貢献している
  • 80%=自分の食い扶持は稼げている
  • 60%=赤字だが、他の社員の頑張りで何とか雇用は維持できる
  • それ以下=給料泥棒

同じように、研修で出た宿題の数(総計25の小さなタスク)の報告数に対して、

  • 20個=自分の食い扶持は稼げている
  • 15個=赤字だが、他の社員の頑張りで何とか雇用は維持できる
  • それ以下=言いたくないけど何のために参加しているのか分からない

というラインが示されました。

簡単にいうとこの研修の参加者は「さぼっている」とみなされたのです。スキルの付与だけでは十分ではないという研修の壁を突き付けられた気分でした。

私は小さいながらオーナー社長(当時は社員がいなかったが)ですが、当時はまだピヨピヨ。稼げてもいないし、組織もない、更には、まだつぶれても会社員に戻ればよいというような甘さがあったのです。この指摘を直接的にされて、改めて確かに成果の出せない社員を将来的に雇用し続けていくことはできないなと、覚悟のようなものを学ばせてもらったのです。

メモに残っていたのは以下であった。

成果を出せる社員はできる「方法」を考えて行動する、成果を出せない社員はできない「理由」を考え行動しない。基本的に人は変えられない。変えられるのは行動だけ。もし行動ができないというなら、研修に参加するだけ生産性が下がるので参加しなくて良い。次回からきちんとやる前提であれば研修を継続する。

これによって、残りの三回は、ビジネスマインド的な色彩を強く帯びることになりました。上記の内容を本人たちに伝えて、できない理由を潰していきました。

「できない」には、難しくてできない、できるが継続できないなど、さまざまな要因がありますが、まずは原因追及からはじめたところ、段取りの部分で大きく躓いていました。このため、架空のプロジェクトを遂行するという今であれば優先順位付けタスクの分解のような内容のワークを実施しました。

このときにも面白い発言があったので備忘として記載しておきます。「私は、型を学んでもそれを使いたくない。自分のやり方でやりたいんだ」というものがあったのです。典型的なローパフォーマーの発言だと思ったのと同時に、だから成果が出ないんだと合点しました。基礎のない人が我流で仕事をしてもほとんどの場合成果が出ません。これをやる限り、巨人の肩に乗ることができないからです。こうした参加者からのハレーションをひとつづつ潰し、最終的には全ての上司にご満足いただける結果となったのを記憶しています。

発掘して分かったこと

発掘しての発見としては、まず、「小さなコンテンツを作る」「型で学ぶ」「事例を作る」「それをつなげて一連の研修を作る」「少人数」「ゲーミフィケーション」「成果を出す」の原点がここだろうということです。研修会社出身だと、かつてこうした取り組みをやっていたのかと聞かれることもありますが、こうした研修は本研修が初めてでした。

この数年後にも、全てのコンテンツを手元に用意しておいて、研修の進行に合わせて使うべきツールを組み替えていくという営業研修を実施しましたが、長期間のアクションラーニングを研修という時間の中で行うという離れ業だったと捉え直すことができました。

また、この案件には「外部者によるOJT」であり、「グループコーチング」という側面もあり、人材育成のラストワンマイルを支える取り組みでもありました。今、この案件を請けられるかと言えば、稼働がかかりすぎて難しいのが実際です。ただ、当時は、移動して2時間実施して、レポーティングするだけで5-6時間かかっていたものが、オンライン化したことで、少しハードルは下がっているのかもしれません。

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