先日、HRカンファレンス2014にて体験型研修の効果測定についてお話をしました。当初案では、有名な「カークパトリックモデル」を批判的に見てみようと思っていたのですが、和訳された多くの文献で様々な訳がなされているため、英語の原典にあたることにしました。
すると、数年前にカークパトリックの息子夫婦の手により、カークパトリックモデルが更新され、「ニューワールドカークパトリックモデル」が発表されていました。(和訳するとそこはかとなく大阪っぽい感じがするので訳さずにそのまま表記します。)
これまでのカークパトリックモデルは、私のように体験型研修を扱うものは極めて使いにくいものでした。ニューワールドカークパトリックモデルはその点で大きく使い勝手がよくなっています。
- 反応(Reaction)
- 学習(Learning)
- 行動(Behavior)
- 結果(Result)
という大枠は変わらず、内容に追加がなされていました。
反応
まず、「反応」です。新たに2つの項目が追加されていました。
- その研修に主体的に参加できたと感じるか
- 職場で活用の場が想定できるか
です。
これまで「反応」は、ハッピースコアとも呼ばれ、満足したかどうかしか測定していませんでした。満足することがビジネスにおいて何にもつながらないというのはご存知の通りで、特にビジネスゲームはゲームなだけに満足度は高いけれども。。。という状況にありました。これに対して、新しい2点が加わることで、研修への参加度合と活用イメージの両方が測定可能になります。アンケートにこの項目を2つ加えるだけでアンケートの質はぐっと変わりそうです。
学習
2つ目に、「学習」です。
学習というと、教育学者ブルームのKSA(知識・スキル・態度)の3つでした。
「態度」の説明に新しい項目が加わりました。「重要性の認知」です。「○○することが大切だと分かった」というのはこれまでは項目に入っていませんでしたが、今回から新たに追加されました。
ビジネスゲームは知識習得を目的としていなかったり、スキル学習でもなかったりしますので、これも非常に評価しにくいものでした。ビジネスゲームでは、視座の変化などを効率的に行うことができますが、「態度」のカテゴリに入るかというと微妙なところでした。
また、新しい要素が加わりました。2つあります。
「コミットメント」です。これは「職場で学んだことを使ってみたいか」です。前述の「活用の場が想定できるか」と重なりますが、活用の場が想定できるけれどもやりたくないということが当然ありますので、異なる項目として扱います。
次に「自信」です。これは、やってみたら「できる自信がある」かということですね。これも、「やりたいけどできそうもない」ということが現実にはありますので、ここまでが加わったことでよりわかりやすくなりました。
行動
3つ目に「行動」です。
みなさんが、自分が行動するときはどんな時かというと、誘因と動因が重なったときです。なので、やりたいと思ったところでそれを促す仕組みが職場になく、「研修は研修。職場のこれまでのやり方を変えるな」という暗黙の了解があれば、行動にはつながりません。その研修「以外」の環境を扱うようになったようで、その点でHPIの視点が入ってきたように思います。(ここは私の誤訳の可能性もあるかもしれないので、原典をご確認ください。)
結果
最後に、「結果」です。
以前にコラムで書いたのですが、研修の3か月後に行動している人は、1か月後にも行動しているし、1日後から何らかの行動の兆候が見えるものです。長期で測定するというのは、煩雑で活用に耐えるものではありませんでしたが、短期間の「兆候」の測定であれば可能です。結果を「兆候」ととらえなおしたのが非常に画期的だと感じました。
登壇すると、このように調べ物をすることが多いので、登壇する側が学ばせてもらうことが多いです。次回の登壇も楽しみでなりません。数年前に更新された本モデルなのですが、日本ではあまり知名度がないようで日本語で書かれたブログはまだありませんでした。どうして広まっていないのかという点で何か理由があるかもしれませんが、せっかく調べた内容なので共有させていただきます。
カテゴリー: イベント開催報告
公開日: 2014年5月24日